アリストテレス

人間は生まれながらにして
社会的動物である。

Aristotle[前384-前322]
古代ギリシアの哲学者。プラトンの学園(アカデメイア)で学ぶ。アレクサンドロス(後のアレクサンドロス大王)の家庭教師を務めたあと、自らの学園を創設、充実した学究生活を送った。

 『アテネの学堂』(ラファエロ作、1509-10年)と題された有名な絵がある。その中心に描かれた二人の人物――プラトンが天上を指さしているのに対して、アリストテレスは手のひらを地上に向けている。私はイデア界ではなく、この現実世界のことを考えるというジェスチャであろう。実際、アリストテレスは自然学(フィジカ)を体系化し、今日の自然科学の基礎を作った。彼の形而上学(メタ・フィジカ)もこれと不可分の関係にある。
 アリストテレスは師プラトンの超越的なイデア論を否定した。事物の本質は事物から離れてあるものではなく、事物に内在するものである。アリストテレスは個々の事物に内在する形相(かたち)こそが本質であるとした。

例えば、何ゆえにこれ〔このレンガや石など〕が家であるか。家の本質〔家の形相〕がそれにあるからである。……こうして質料〔レンガや石〕がそれによって特定のもの〔家〕となるその原因、つまり形相が探究されるのである。(「形而上学」)

 家はレンガや石といった材料(=質料因)に、適切な形と構造(=形相因)を与えて初めて家としての機能(=目的因)を持つ。これに起動因(制作者)を加えれば、生成変化する万物の四原因となる(究極的な制作者は神である)。
 アリストテレスはまた倫理学の創始者でもあった(『アテネの学堂』のなかでアリストテレスが手にしているのは「倫理学(エチカ)」である)。アリストテレスは中庸の徳を説いた。過度と不足の両極端を避け、あるべき中間を選び取る能力を身につける(=習慣づける)ことこそが徳のある生き方(幸福の要件)である。ここでもアリストテレスの現実重視の立場は明確である。
 のちに「万学の祖」と呼ばれるアリストテレスの研究は、自然学、形而上学、倫理学を始めとして天文学、気象学、生物学、動物学、心理学、論理学、政治学、修辞学、詩学(芸術論)にまで及ぶ。不幸にして、公刊された彼の著作はすべて失われており、今日「アリストテレス著作集」として読むことができるのは彼が遺した講義ノート類である。

ニコマコス倫理学(上・下)
アリストテレス/高田三郎訳(岩波文庫)
幸福とは何か。どうすれば幸福に生きられるか。「愛の関係を解消すべきか否か」などといった人生の問題について結構具体的に指南してくれる。